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紙本金地著色三十六歌仙図

【重要文化財 指定年月日  平成2年11月3日】

紙本金地著色三十六歌仙図

紙本金地著色三十六歌仙図

医王寺にある三十六歌仙図は、江戸時代の前期に狩野派の絵師が描いたもので、三十六の歌仙それぞれの表情が豊かに、そして色鮮やかに描かれています。

三十六歌仙とは、奈良時代から平安時代中期にかけての歌人である藤原公任(ふじわらきんとう)が、寛弘7年(1010)頃に和歌に秀でた人たちを選定したものと言われています。
歌仙絵は、平安時代末から見ることが出来ますが、似絵(にせえ)の流行により、鎌倉時代の頃から絵巻などに描かれるようになり、室町時代に入ると扁額として神社に掲げられるようになりました。

さらに江戸時代に入ると画題として多くの絵師が取り上げ、絵馬や浮世絵などにして、庶民文化に広く浸透していく事となりました。
歌仙の服装を見ると、男性は黒袍束帯(くろほそくたい)の正装が最も多く、直衣のうし(平常の服装)や狩衣(かりぎぬ)は少ないです。また、肩をいかめしく張った強装束(こわしょうぞく)を着用した姿が描かれています。強装束は、衣裳を着用したときに威厳を持たせるように糊を強くして仕立てた装束のことです。

当時は、服の規定があったため、宮廷人の正装姿を描く場合は、自然と束帯姿が多くなるのは当然のことでした。そのため、図様の類型化を免れず、画師の主力は顔や表情の描写でそれぞれの個性や老若をたくみに表現するという、似絵の本領が発揮されることとなったのです。
三十六歌仙図の中には、5名の女流歌人がいますが、斎宮女御(さいぐうにょうご)のみは女御(にょうご)(天皇に侍る女性、中宮に次ぐ地位)という身分のため、障子や几帳に囲われています。小大君(こだいのきみ)、小野小町(おののこまち)、中務(なかつかさ)の3名は唐衣(からぎぬ)に裳を付けた女官の正装で、伊勢いせは唐衣を略して裳だけを付けた略装ですが、それぞれに優雅な衣裳美を凝らしています。

三十六歌仙図は、六曲一双の屏風で、縦1.52m 横3.478mの大きさです。普段は展示しておりませんが、正月など特別な日には展示いたします。

三十六歌仙の一覧

No 歌仙 ふりがな 肩書き 時代区分
柿本人麿 かきのもとのひとまろ 正三位柿下朝臣人麿 万葉時代
凡河内躬恒 おおしこうちのみつね 六位 淡路権じょう 古今時代
大伴家持 おおとものやかもち 中納言従三位鎮守府将軍 万葉時代
在原業平 ありわらのなりひら 蔵人頭従四位上 六歌仙時代
素性法師 そせいほうし 律師素性 僧正遍昭の子 古今時代
猿丸大夫 さるまるのたいふ   六歌仙時代
藤原兼輔 ふじわらのかねすけ 中納言従三位 古今時代
藤原敦忠 ふじわらのあつただ 権中納言従三位 後撰時代
源 公忠 みなもとのきんただ 従四位下 後撰時代
10 斎宮女御 さいぐうにょうご 二品式部卿重明親王女徽子 後撰時代
11 源 宗于 みなもとのむねゆき 正四位下光孝天皇孫 古今時代
12 藤原敏行 ふじわらのとしゆき 蔵人頭従四位 古今時代
13 藤原清正 ふじわらのきよただ 従五位上紀伊守 後撰時代
14 藤原興風 ふじわらのおきかぜ 正六位上 古今時代
15 坂上是則 さかのうえのこれのり 従五位下 古今時代
16 小大君 こだいのきみ 三条院東宮時女蔵人左近 拾遺時代
17 大中臣能宣 おおなかとみのよしのぶ 祭主正六位下神祇大副 後撰時代
18 平 兼盛 たいらのかねもり 従五位上駿河守 後撰時代
19 紀 貫之 きのつらゆき 大内記従五位上玄蕃頭 古今時代
20 伊 勢 いせ 大和守藤原継蔭女 中務ノ母 古今時代
21 山部赤人 やまべのあかひと 五位 万葉時代
22 僧正遍昭 そうじょうへんじょう 蔵人頭左近衛少将宗是 六歌仙時代
23 紀 友則 きのとものり 大内記従五位下 古今時代
24 小野小町 おののこまち 小野宰相常詞女 六歌仙時代
25 藤原朝忠 ふじわらのあさただ 中納言従三位 後撰時代
26 藤原高光 ふじわらのたかみつ 右近衛権少将正五位下 拾遺時代
27 壬生忠岑 みぶのただみね 右近番長 古今時代
28 大中臣頼基 おおなかとみのよりもと 祭主神祇大副従四位下 後撰時代
29 源 重之 みなもとのしげゆき 従五位下左馬助 拾遺時代
30 源 信明 みなもとのさねあきら 前陸奥守従四位下 後撰時代
31 源 順 みなもとのしたごう 従五位上能登守 後撰時代
32 清原元輔 きよはらのもとすけ 肥後守従五位上 後撰時代
33 藤原元真 ふじわらのもとざね 丹波守従五位下 後撰時代
34 藤原仲文 ふじわらのなかふみ 正五位下伊賀守 拾遺時代
35 壬生忠見 みぶのただみ 摂津権大目 後撰時代
36 中 務 なかつかさ 中務卿敦慶親王女 母伊勢 後撰時代