医王寺について

ご本尊 薬師如来

行基菩薩敬刻の薬師如来

行基菩薩敬刻の薬師如来

薬師如来は、正式には薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)で、医王という別名で呼ばれたりもします。寺院名で医王寺や薬師寺、薬王院などは、ご本尊として薬師如来をお祀りしている場合が多いです。
薬師如来は、薬壺(やっこ)を左手に載せ、右手は施無畏印(せむいいん)という尊像が一般的になります。また、薬師如来のみでお祀りされることは少なく、脇侍(わきじ)として日光・月光菩薩。眷属として十二神将を従えています。

写真は、天平6年〜20年(734〜748)行基菩薩が敬刻したと伝えられる、ご本尊の薬師如来像です。医王寺では長い間、秘仏として薬師堂内にてひっそりとお祀りしておりました。

しかし、それを知った松平伊豆守信綱(まつだいらいずのかみのぶつな)は、薬師如来を信仰するすべての人々が、薬師如来のお姿を直接拝むことが出来るように。とのはからいで、「御前立ち」として薬師如来座像をご寄進下さっています。

現在は、松平伊豆守信綱のご寄進による薬師如来は、客殿にてお祀りし、行基菩薩敬刻の薬師如来は、薬師堂にてお祀りしています。どちらの仏さまも、ご参拝下さる皆さまに慈悲の眼差しを向けておられます。

仏の教えを守り、仏道修行に邁進するものを、菩薩といいます。如来とは悟りを得て、仏になった状態なのですが、薬師如来もずっと昔は菩薩でした。菩薩はみな、基本的な誓願(せいがん)という5つの誓いを立てています。

  1. 衆生無邊誓願度(しゅじょうむへんせいがんど)
  2. 福智無邊誓願集(ふくちむへんせいがんしゅう)
  3. 法門無邊誓願覺(ほうもんむへんせいがんかく)
  4. 如来無邊誓願事(にょらいむへんせいがんじ)
  5. 菩提無上誓願證(ぼだいむじょうせいがんしょう)

薬師如来の十二の大願「薬師瑠璃光如来本願功徳経」

松平伊豆守信綱寄進「御前立ち」の薬師如来

松平伊豆守信綱寄進「御前立ち」の薬師如来

薬師如来の十二の大願とは、先の五大願を基本にして、菩薩の頃の薬師如来が、将来如来になったときに実行すべき衆生救済のための十二の誓いのことです。五大願と区別するために別願と呼ばれたりもします。

第一願   相好具足(そうこうぐそく)
第二願   光明照被(こうみょうしょうひ)
第三願   所求満足(しょぐまんぞく)
第四願   安立大乗(あんりゅうだいじょう)
第五願   持戒清浄(じかいしょうじょう)
第六願   諸根完具(しょこんかんぐ)
第七願   除病安楽(じょびょうあんらく)
第八願   転女成男(てんにょじょうなん)
第九願   去邪趣正(きょじゃしゅしょう)
第十願   息災離苦(そくさいりく)
第十一願  飢渇飽満(きかつほうまん)
第十二願  荘具豊満(そうぐほうまん)

薬師如来の功徳は、現世利益(げんせりやく)であって、人がこの世で生きるために必要なものを授けてくれます。その中でも多くの人が苦しめられている病気。その病を除いてくれるという部分が強調され、「病気平癒・延命長寿」という、薬師信仰の特徴を決定づけたものと考えられています。

薬師如来の十二の大願の本質は、衆生の身を安楽な状態に導き、精神上の解脱(悟り)を衆生に得させようとするものです。これは十二の大願中、第七願に述べられていることで、他の十一の大願は、第七願の示す状態を得るために、心身おのおの別々に満足させて、最後には無上菩提(悟り)を得させようというものです。

薬師如来立像(作者不明)

薬師如来立像(作者不明)

お気づきの通り、現世利益(げんせりやく)と言って薬師如来の功徳は、私たちの日常生活に直接影響を及ぼすものです。だからこそ、私たちは人間的な欲望に負けてしまって、薬師如来の功徳をもっと欲しいとか、独り占めしようとしてはいけません。

薬師如来の数々の功徳は、あくまでも悟りを得るための手段にすぎないのです。

薬師如来の功徳と教えに導かれ、悟りの境地を目指し、一切衆生を救済するという、慈悲の心をみずから起こしていく。それが智慧と慈悲を基とする、仏教の特徴であり一番大事なことです。

薬師如来の真言 「オンコロコロセンダリマトウギソワカ」